2021年7月2日、厚生労働省は日本産婦人科学会及び日本産婦人科医会に対し、人工妊娠中絶の方法として「吸引法」を周知するよう依頼を出しました。
人工妊娠中絶等手術の安全性等について(厚生労働省子ども家庭局母子保健課)
http://www.jsog.or.jp/news/pdf/20210705_kourousho.pdf
流産手術、中絶手術に用いられる「掻把法(そうは)法」と「吸引法」の違い
掻把(そうは)法とは
一般的に妊娠12週未満における流産手術や中絶手術は「掻把法」を用いて行われています。「掻把法」は金属の器具を用いて子宮の中身をつかんで除去した後、スプーン状の金属の鉗子(かんし)を使用して子宮内膜をかきだす方法です。術前に十分な頸管拡張を行う必要があるため、強い痛みを伴います。また、金属器具で掻把するため、まれに子宮を傷つけたり、子宮に穴があいてしまう(穿孔(せんこう))リスクがあります。
吸引法とは
「吸引法」は掻把法に比べて子宮への負担が少ない方法です。国内で行われている一般的な吸引法は、金属の吸引管を用いた電動吸引法です。 電動吸引法は硬い金属管を使うため子宮を傷つけるリスクが少なからずあり、また吸引管および吸引チューブは使い捨てではなく再利用されるため衛生面に若干の不安があります。
当院で用いる吸引法「MVA(手動真空吸引法)」
当院で用いる「MVA(手動真空吸引法)」は、世界で40年以上にわたり約100か国が取り入れています。しかし、日本ではまだあまり普及していない吸引法です。
吸引管が細く、ソフトカニューレという素材でできているため子宮の内膜を傷つける恐れがありません。また、手術のキットは吸引器も含めて一回毎の使い捨て(ディスポーザブル)であるため極めて清潔に手術を行うことができます。痛みが少ないのも特徴です。WHOも「MVA」を強く推奨しており、今後国内でも取り入れる施設が増えることが予想されます。
MVAの特徴まとめ
● 痛みが少ない
MVAは器具の先端が細く、以前の子宮頚管を大きく広げる必要がないため、痛みが最小限で抑えられます。
● 手術時間が短い
MVAは処置の時間が10分程度と掻把法に比べ短時間で処置が完了します。
● 出血量が圧倒的に少ない
子宮をつかんだり、ひっぱったり、かきだしたりすることがなく、また時間が短いため出血量が少なく済みます。
● 子宮に優しい
全て柔らかい素材でできているため、子宮を傷つけたり、穿孔したりするリスクが低くすみます。また、使用する薬剤の量も減るため、体にも優しい方法です。
● 極めて衛生的
電動吸引法や掻把法では使用後、器具を十分に洗浄し、滅菌して再利用しますが、MVAは1人1キットの使い捨てのため器具の洗浄・再滅菌が不要です。
そのため、極めて衛生的に使用することができます。
※ 当日の手術の流れ、持ち物などは当院の診療案内をご覧ください →http://www.oi-wcl.com/mva/
参考文献)
世界保健機関(WHO)安全な中絶 Safe abortion 医療保健システムのための技術及び政策の手引き 第2版
https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/70914/9789241548434_jpn.pdf;jsessionid=E4DFF7DD30CC9A1A9F92983EAC0A3D26?sequence=10
Women’s Health Japan MVAシステム製品情報
https://www.womenshealthjapan.com/dr/product/mva_system.html