クリニックブログ

2019.05.03更新

HTLV-1は、母乳を介して母子感染するウイルスです。厚生労働省から妊婦の方に向けてHTLV-1の母子感染を予防する喚起がなされています。
妊婦健診時のスクリーニング検査にて感染の確認を行い、もし感染している場合は授乳方法を工夫することによって、HTLV-1に赤ちゃんが感染する可能性を低くすることができます。感染していても生涯発症しないことがほとんど(全体の95%)と言われておりますので、過度にご心配いただくことはありません。

●HTLV-1とは

細胞(HTLV-1は、HumanT-cellLeukemiaVirustypeⅠ(ヒトT細胞白血病ウイルスーⅠ型)の略称です。
主に血液Tリンパ球に感染するウイルスです。一度感染してしまうとウイルスを持ち続けることになりますが、感染しても発病する人はごく一部(2.5~5%程度)で、しかも発病までには長い潜伏期があります。このようにこのウイルスを無症状で持続的に保有している人をHTLV-1キャリアと呼びます。
現在約108万人、つまり日本の人口の約1%にあたる数のHTLV-1キャリアがいると推測されています。 

rinpa1 

●HTLV-1が引き起こす病気

ATL:成人T細胞白血病・リンパ腫
HTLV-1に感染した血液細胞(Tリンパ球)ががん化して、白血病や悪性リンパ腫を起こしたものです。
他に明らかな病気が無く、以下の症状が出てきた場合にはATLを発症している可能性があるため、速やかに最寄りの医療機関(血液専門医のいる病院)を受診して下さい。
①強い倦怠感・高熱がなかなか治らない(通常1週間以上)
②リンパ節が腫れる
③皮膚の赤く盛り上がった発疹
④意識障害

HAM:HTLV-1関連脊髄症
HAMが発症する原因はまだはっきりとはわかってませんが、HTLV-1に感染したTリンパ球が脊髄の中に入り込み、炎症を起こすことがきっかけと考えられています。歩行障害(歩行時の足のもつれ、足の脱力感)や排尿障害(尿の回数が多くなったり、逆に尿の出が悪くなったりなど)、排便障害(便をうまく出せないなど)の症状が表れます。HAMは平成21年度に「厚生労働省難病対策疾患」に指定されました。


●HTLV-1の感染経路
人から人へ次の3つの経路で感染します。
 ①母子感染(主に母乳を介して)
  母乳中に HTLV-1 感染細胞が含まれているために、生後6か月間以上母乳を飲ませ続けた場合、赤ちゃんの 5~6 人に 1 人が感染(感染率 15~20%)することが知られています
 ②性交渉による感染(主に夫婦間感染)
  主にキャリアの男性(夫)から女性(妻)に感染しますが、稀に女性から男性への感染もあります
 ③輸血感染キャリアから輸血を受けることで感染します
  1986年以降は献血者に対して赤十字血液センターでの検査が行われ、HTLV-1感染血液が除外されるようになったため、輸血感染はなくなったと考えられています

 

●HTLV-1の感染力
HTLV-1は感染リンパ球が生きたままの状態で体内に入ることにより感染するので、感染経路が限られています。プールや入浴、咳やくしゃみなど一般的な日常生活の中で感染する心配は有りません。

 

●HTLV-1の検査
HTLV-1キャリアであるかどうか調べる場合は、まずスクリーニング検査(PA法又はEIA(CLEIA)法)を行い、陽性の判定が出た場合は確認検査(WB法)を行います。
★当院ではすべての妊婦の方にスクリーニング検査を実施しております

 

●HTLV-1と妊娠・出産
HTLV-1キャリアであっても妊娠に特別な影響はありません。HTLV-1が原因で赤ちゃんに奇形を生じたり、生まれた後に異常を起こすこともありません。

 

●HTLV-1と母乳
母子感染の大部分が母乳を介しています。母乳中にHTLV-1感染細胞が含まれているために、生後6か月間以上母乳を飲ませ続けた場合、赤ちゃんの5~6人に1人が感染(感染率15~20%)することが知られています。対策として授乳をしない人工栄養などの方法がありますが、この方法をとったとしても母子感染が完全になくなるわけではありません。(非常に少ないとされながらも子宮内感染や産道感染の可能性もあります)
お母さんがHTLV-1キャリアである場合は、医師とご相談の上授乳方法を決定してください。
また、母乳以外については特別な対応は全く必要ありません。このウイルス感染細胞は乾燥・熱・洗剤で簡単に死滅するため、衣服、食器、寝具などを通じて感染することはありません。また、咳やくしゃみなどの飛沫感染もありませんし、キスや唾液を通じて感染することもありません。

 

~HTLV-1についての詳しい情報、ご相談は<がん対策推進総合事業>またはお住まいの地域の<保健所><母子保健担当窓口>へお問い合わせください~

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<参考文献・サイト>
1、厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課HTLV-1母子感染予防対策保健指導マニュアル
  www.jsog.or.jp/public/knowledge/img/HTLV_1.pdf
2、厚生労働科学研究費補助金がん対策推進総合事業
  http://www.htlv1joho.org/general/general_carrier.html

 

投稿者: おおいウィメンズクリニック

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